志水辰夫氏著『いまひとたびの』を読んだ感想

みなさんこんばんは。

 

今回はいまひとたびのを読んだ感想です。

(1994年刊行、文庫版1997年出版)

ミステリー小説を書くコツと裏ワザという書籍を読みました。

その中で、写経のように小説を書き写す勉強法が載せられています。おすすめの小説家としては、景色描写は志水辰夫氏、会話のテンポは黒川博行氏に学べとありました。

そこで、志水辰夫氏の作品はいまひとたびの黒川博行氏の作品は疫病神を読み、写経することにしました。

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以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。

 

 

著者は?

著者は志水辰夫氏です。1936年生まれ。2021年現在で84歳。私の敬愛する塩野七生さんと今現在は同い年です(今は同い年ですが年度は違うので正確には1歳違い)。

1981年45歳に刊行した飢えて狼でデビュー。1992年には行きずりの街という作品が「このミステリーがすごい!」で第一位になりました。ちなみに2006年にはベストセラーにもなっています。

 

印象に残った内容は?

いまひとたびのでは死をテーマに9篇の短編が載っています。

すっきりとした読了感があるものから、モヤっとした終わりまで、丁寧な風景描写で書かれています。病気による自分の死、親の死、友人の死、兄嫁の死、叔母の死などが物語の展開にありつつ、その中で自分の生き方、生き様、周りの人間の葛藤などが描かれています。

主人公は役職にある人間で、多忙であるパターンが多かったです。そのため、家庭を省みなかったり、時間がなかったりという中で物語が展開します。周りとの軋轢がある中、晩年田舎に引っ越してという展開も何点か見られました。

描写に定番があると聞いていましたが、確かに納得の技量でした。私も小説を書くようになって、レベルの高さを感じました。描写が細かいといいますか、雰囲気を出すのがうまく感じました。真似したものです。

私が一番印象に残ったのはという短篇です。以下ネタバレを含みます。私の言葉で書いているので微妙なニュアンスが違いますが、気になる方は書籍を読んでください。

 

兄嫁弥生は病院に入院している。弥生の姪の片山美奈子が面倒を見るはずであったが、ほとんど姿を見せない。代わりに主人公の妻国子が面倒を見ているが、耐えることのできない意地悪をされていた。「あなたには娘がいていいね」。意地悪をされているのには理由があった。

主人公の子供憲一と弥生の息子剛は仲が良かった。しかし、3年前の雨の日の夜に事件は起こる。大学2年生前の春休みに帰省していた憲一は、暴走族上がりの剛と一緒に車に乗り、道路を飛び越える事故で死亡してしまう。死体は投げ出されており、どちらが運転していたかはわからない。だが、警察は剛が運転していたのではないかと伝えていた。しかし、兄嫁の弥生はそれを信じず、憲一が運転していて死亡したと信じていた。なぜなら、剛は運転技術が高かったからだ。

ある日、主人公が病室にいるとき兄嫁弥生の容態が急変する。最後に「うー」という言葉を残し死亡してしまう。

実は主人公には秘密があった。事故の直前、息子の憲一から電話が来た。「今夜200キロ乗った。剛が筋がいいっていうんだ」。夜に田舎道で100キロ出していた。初めて味わうスリルにはおあつらえ向きだった。

もしかしたら、兄嫁弥生の息子剛も同じように電話していたのかもしれない。兄嫁弥生の「うー」という言葉は、「嘘つき」と言いたかったのではないか。

駆けつけた妻国子に、兄嫁弥生に最後の言葉を伝えた。兄嫁は「すまなかった」と息苦しい中、声を絞り出したんだ、と。

 

感想

久しぶりに読んだ小説です。

私が最近読んだ記憶にあるのは、三上延氏のビブリア古書堂の事件手帖森見登美彦氏の太陽の塔など、比較的若い人の作品しか読んでいませんでした(それでも6年前ぐらいですが)。

 

 

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それらの作品と比べると、志水辰夫氏の作品は重いテーマに感じられましたが、描写がさらっとしているのか簡単に読むことができました。その上、なるほどそう書くのかといった勉強にもなりました。

印象に残った内容でも書きましたが、という作品が印象に残りました。タイトルのはどこに嘘があるのかと思いましたが、そういった展開にするのかと非常に勉強になる構成でした。ぜひ皆さんも読んでください。

1つだけ気になりました。女性の顔の描写が少し単調に感じました。柔和な顔という表現の女性が多々出てくるのですが、柔和を別の語に変換すれば気にならないのかなとも思いました。

ミステリー小説を書くコツと裏ワザを読んだ話は先述しました。その中で、「言った」を多用するなとありました。確かに、志水辰夫氏の作品は「言った」という表現が少なかったように感じます。

ただ、海外での小説の書き方、いわゆるハウツー本では、逆に「言った」で書け、変に「叫んだ」「語った」などの言葉は使うなとありました。こう言った文化の違いは面白く感じるので、外国の書籍とも見比べていきたいと思います。

ベストセラー小説の書き方を読んだ感想

 

実は私、小説を書くつもりなのですが、小説を読むのがあまり好きではありません。小説を書くためにも、これから小説もどんどん読んでアウトプットしていきたいと思います。

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