「発信力の育て方-ジャーナリストが教える「伝える」レッスン-」の感想

みなさんこんばんは。

 

今回は「発信力の育て方-ジャーナリストが教える「伝える」レッスン-」の感想です。

 

以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。

シリーズとしては、14歳の世渡り術というシリーズになります。

河出書房新書ホームページにブログがありますが、2016年12月で止まっています。このシリーズは個人的に面白いうと思うので、再開して欲しいですね。

14歳の世渡り術ブログ

 

著者は外岡秀俊さんです。

1953年生まれで、東大在学中に「北帰行」で文藝賞を受賞しデビュー。1977年に小説活動を休止し、朝日新聞社に入社。ヨーロッパ総局長、東京本社編集局長などを歴任した方です。

 

本書籍ですが、情報の扱い方実際にどう発信するかといった方法について平易に書かれています。

大まかに目次を書くとこのような形になります。

第1章情報収集術 自分が伝えたいものを見つける

第2章取材術 客観力を育てる実践的レッスン

第3章編集術 誰もが理解できるために

コインチェック

第4章発信術 ネット社会は一人一人がジャーナリスト

 

第1章の情報収集術では、記事にするための情報をどう集めるかが書かれています。

記者の先輩から言われたこと、「大切なのは「エッ?」と「へーえ」なんだ。それを「そうなんだ」と納得してもらうのが新聞記事だ」

読者に納得や共感をもたらすのが新聞記事との話でした。

 

米国の心理学者は「うわさ」の広がる量について「うわさの広がる量=重要度×あいまいさ」という方式を提唱しました。ニュースは正確さが何よりも大切ということです。あいまいさがあると、噂として広がってしまいます。

 

「ネット上の情報は、取材のきっかけになるでしょう。でも、記者の仕事は、ネット上にない情報を発信することではありませんか」ネット状にある情報をなぞるだけなら、記者という職業は必要ありません。

確かに、ネット上には色々な玉石混交の情報が落ちています。情報探索のきっかけにするのは良いが、それを扱っていては記者は必要ないとのことでした。

 

第2章取材術では、取材のあり方などについて語られています。

すでに書かれた情報を頭に入れて現場に行くと、その情報に沿ったものしか見えない。自分で仮説を立てて現場に行くと、仮説では説明できないこと、仮説に反することが見える。仮説が裏切られたら、それがニュースなのですという言葉に、はっとされられました。これこそ情報の本質のように感じられました。

 

第2章で印象に残った話です。

1959年9月に超大型の台風が伊勢湾を襲った。疋田桂一郎さんという方が、地元の報道が一段落した後に、現地に出かけた。

それまでに膨大な記事を書いた後輩が、「今ごろ東京からやってきて、何が書ける」と冷ややかな目で眺めていた。

 

疋田さんは、伊勢湾全体が台風に襲われて、沿岸一帯が被害にあっていると想像していた。

実際の被害は、労働者たちが住む低地に集中。会社の幹部たちが住む高台には被害が及んでいない、階層により、被害の有無がわかれていた。後輩記者たちは、被害が集中する地域に入ってその惨状を報告していた。

疋田さんの分析では、被害にも階層の差があらわれていること、安心よりも安上がりを優先させた名古屋市のまちづくりにも問題があったことを指摘した。

伊勢湾すべてが被害にあったという疋田さんが事前に立てた仮説が、現場ではひっくり返された。その驚きがニュースになる。なぜそうなっているか、原因を探ることが分析であるとのこと。

 

次も第2章で印象に残った話です。

メディアは第四権力なのか?

評論家でジャーナリストでもある立花隆さんが、権力の暴走を監視するだけではなく、世論の暴力を監視する役割がジャーナリストにはあるとおっしゃっている。

第二次世界大戦では、新聞やラジオが勝ち続けているという大本営の発表をそのまま垂れ流しにしただけではなく、戦意高揚の見出しを書いて戦争をあおった。

世の中の意見が一色になって、全員に同調しているとき、社会のブレーキは壊れ、暴走を始めてしまう。

これに対抗するため、言論機関は常に多様な意見を取り上げ、少数意見であっても大切にしなくてはいけないとのこと。

確かに、同じ意見になってしまうと、反対派の人は反対にしにくくなるのは、学校や会社で経験しました。確かキリスト教の会議でも、全て同じ意見になったらおかしいとのことで、再度議論すると、新約聖書に書いてあった気がします。この考えがある限り、非道な行いはされないと考えられます。

 

第3章編集術では、発信するための情報のまとめ方が簡単に書いてあります。

 

やはり、情報をまとめる上で大事なのは、図やグラフはシンプルにすることです。

著者の方が、デザインの部長からこう言われたことがあるとのことです。

「図表やグラフは、あまり多くの要素を盛り込むと、かえってわかりにくい。マイナスの発想を基本にしてください」

何が大事かわかりにくくなってしまうので、基本的には引き算の発想が大事です。

 

貴重な意見は、大切にするとの考え方も大事です。

新聞社ではよく、「一通の投書のうしろに数十万の読者がいる」という言葉を使うと。ほとんどの読者は新聞のわからない点やおかしいと感じたことについて指摘はしない。その中で投書してくれる人は、ほんの一握りとのことです。

 

第4章発信術では、情報の扱い方と伝え方について書かれています。

 

その中で、重要だと思ったのが、伝聞情報はそのままでは書かないとのことです。

 

伝言ゲームをやった人は、どのぐらい難しいか知っていると。

1973年12月、愛知県の信用金庫で、数日の間に市民5000人がいっせいに預貯金を引き出す騒ぎがあった。

倒産するという口コミが広がり、パニックを起こした結果であった。

 

電車の中で、信用金庫に就職が決まった女子高生の友達は、「信用金庫は危ない」と言ってからかった。友達は一般論として、「強盗が入るかもしれない」というつもりで言ったが、女子高生は気になって親戚にそのことを話した。

親戚は、別の親戚に問い合わせて、次々に伝言ゲームが広がっていった。

街中に、倒産するらしいという噂が広がり、職員が使い込みをしたや理事長が自殺したらしいといった根も葉もないデマが飛び交った。

相手が伝聞情報を伝えてきたら、かならずその出所を確かめる。信が持てた時に、伝聞は事実に変わると。

 

他には、受け手がどう情報を受け取るかを考えるのが大切。

あるとき著者が横浜支局で難病の取材をし、医者から言われたた通り、不治の病という記事を書いた。

 

難病を患う女性から電話で「あなたの記事が、私の希望を打ち砕いた」との連絡が。

「難病でも患者は、いつかは新薬が開発されるかもしれない。そんなかすかな希望を支えに闘病しているんです。不治の病という言葉がどれほど残酷か、あなたにはわかりますか」

 

と聞いて、著者は深く反省し、詳細を調べ続報を書いたという話です。

これは、多々ありそうなシチュエーションです。いじめている側はいじめと思っていないが、受け手はいじめと感じたという話はよくあります。

結局は、教養を高く持ち、EQをいかに高くするかに尽きると私は思っています。つまりは自分磨きをして、鍛えていくしかないと。これは私にとって永遠の課題です。

 

感想

14歳の世渡り術シリーズとのことで、全体的に平易に書かれていると思います。

いくつか心に残った文言がありましたが、先ほどの内容で紹介したので、一つだけ書きます。

 

ただ「伝える技術」といっても、「伝えるべき中身」がなければ、見かけ倒しに終わってしまいます。

これは常々思っています。やはり中身がないと、どれだけ技術があっても意味はないと思うので、本を読むなりして常に知識を増やしていきたいですね。人との関わりの中で、自分のカラっぽさが明確になってしまうことが多いので、いかに経験を積み、教養を重ねるかです。

 

この書籍では、発信力の育て方といいつつ、ジャーナリストの話が中心になっているため、子供達には想像しにくいことがあるかと思います。ただ、実際の取材の現場の話を知ることができたので、私としては、面白い内容でした。

 

ただ、如何せん記者としてのあり方に内容が偏っているため、近年発達したSNSなどの扱いを中心に、もう少し情報を扱っても良いのかなと思いました。とういうのも最近の中高生はもっぱらSNSを使用することが多いので、シリーズ的にはそこを扱っても良いのかなと思いました。

 

ブログやYoutubeをやっている人間としては、ハッとさせられる内容も多かったです。

何より先述しましたが、読みやすかったです。また実際の例も挙げられていたので、内容も理解しやすい本でした。情報を扱う人間としては、気をつけて記事を書いていきたいと思いました。

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