みなさんこんばんは。
今回は貧困の克服ーアジア発展の鍵は何かを読んだ感想です。
2002年出版
貧困問題について興味があるので、ノーベル経済学賞を受賞した筆者の貧困についての書籍を読もうと思いました。
以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。また漢数字は英数字に変換しています。
著者は?
著者はアマルティア・セン氏(1933年生まれ)です。正確にはアマルティア・セン氏の4つの講演をまとめた書籍です。
アマルティア・セン氏はインドの経済学者、哲学者であり、アジア初のノーベル経済学賞受賞者です。
翻訳は大石りら氏(1960年生まれ)が担当されています。翻訳家であり、TVプロデューサーでもあります。
印象に残った内容は?
教育の有用性と、民主主義の奏功について中心に書かれていると感じた書籍です。
女子教育とエンパワーメントの相関
出生率の低下速度についても、女子教育が普及しているケララ州のほうが中国よりもずっと速いのです。ケララ州では、女子教育の普及が中国よりもずっと速く、その普及率にそって出生率の急激な低下を経験しています。一人っ子政策その他の強制手段が実施された1979年から1991年までのあいだに、中国の出生率が2・8から2・1に低下したのに対して、ケララ州では同じ期間に3・0から1・8に減っています。ケララ州では女子教育と出生率低下の両面において中国より進んでいるのです[現時点では、ケララ州の出生率が1・7以下で中国が約1・9]。
女性の社会進出が進むと、女性の高学歴化が進み、出生率は低下するとのことです。
中国の一人っ子政策により出生率が低下したと思いましたが、女性の権利が増加したことによる出生率の低下の効果もあるようです。
著者は、インドではケララ州のように人間的発展の活動がされていないことにより、インドの社会的、また経済的低迷があると指摘しています。
民主主義では、飢饉は起きない
これらの結びつきを分析するためには、政府や公職関係者や団体を動かす政治的インセンティヴ(誘因)についてよく考えなければなりません。人々の批判に直面し選挙で支持してもらわなければならない場合、統治する側には、人々の要求に耳を傾けるべき政治的インセンティヴがあるのです。
したがって、民主主義形態の政府や比較的自由なメディアが存在する国々では大飢饉と呼べる事態など一度も起こったことがないという事実も何ら驚くに値しないのです。
民主主義のメリットとしては、選挙が行われ、野党や新聞で批判されるため、よりより政治が行われることです。
例を挙げると、インドの1943年に最後の大飢饉が起こりました。しかし、独立後、メディアが現れたり、民主主義政権が確立されると、以降飢饉が起こることはありませんでした。
著者は順調なときは、民主主義のインセンティヴは効果を発揮しませんが、飢饉などの問題が生じた際に、民主主義と非民主主義での対応力の差が出ると指摘しています。
特に非民主主義では、その際に弱者に負担がかかるとしています。
感想
アマルティア・セン氏の4つの講演をまとめた書籍です。
私にとっては、理解するのに苦労した書籍で、読解力が必要な書籍でした。まだまだ理解はほとんどできていません。
アマルティア・セン氏は、民主主義と教育を重要視している印象を受けました。
以前、読んだ経済学の名著 50冊が1冊でざっと学べるでも書いてありましたが、日本をかなり褒めています。
また、セン氏は小渕恵三氏を褒め称えており、読んだ経済学の名著 50冊が1冊でざっと学べるでの筆者は、それを批判していました。
そのイメージがあったので、変に意識して気になってしまいましたが、書籍内では、私自身、小渕氏はとても良いことを言っているように感じました。
本書籍では、歴史的なことに触れる場面もあります。
インドでは、ゾロアスター教やジャイナ教など、いくつかの宗教があるため、政治などもその影響を受けるかと思います。
しかし、400年前ほどのインドのムガール帝国の第三代皇帝のアクバル氏が宗教的に寛容だったことを挙げています。
インドの歴史について学ぶこともできる一方、人権というものについても考えされられもしました。
経済学者でもあり、哲学者でもあるセン氏の思想がわかるのが本書籍です。
難しくも、アジアでの民主主義の奏功がわかったような気がします。