ゴースト・ボーイを読んだ感想

みなさんこんばんは。

 

今回はゴースト・ボーイを読んだ感想です。

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2015年発売

とある書籍でおすすめされていた本なので読むことにしました。

 

以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。

 

 

著者は?

作者はマーティン・ピストリウス氏(1975年生まれ)です。

12歳の時に原因不明の病気にかかり、重度の知的障害になります。しかし、理学療法士の方の助けもあり、2001年からパソコンでコミュニケーションを取れるようになります。2010年には結婚もしています。

2015年には、TEDでも講演されていました。一つ気になったのは、声は当初から使っている音声のポールさん(ポールさんでしたっけ?)ですかね?

 

著者はミーガン・ロイド・デイヴィス氏です。説明欄にありませんが、多分マーティン氏が文字を書くことができないので、代筆した方だとは思います。

翻訳は長澤あかね氏が務めています。私が以前読んだマルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法の翻訳も担当されていました。非常に私の感性に合った本を担当されているので、私が読む本の参考にしている方です。

 

印象に残った内容は?

マーティン・ピストリウス氏の意識が戻ってからの人生についての回顧録です。

意識が戻り何もできなかった時から、アロマセラピストのヴァーナ氏が意思の疎通ができると気づいた時、AACで働いたこと、妻のジョアナ氏との出会いから、結婚までについて書かれた本です。

 

責任

両親が言い争う声が聞こえると、罪悪感でいっぱいになった。ぼくのせいで、みんなが苦しんでいた。ぼくが原因であらゆるネガティブな感情が生まれ、両親は何度も何度も同じけんかを繰り返していた。母さんは医者が勧めた通り、ぼくを24時間介護してくれる居住型の施設に預けたいけれど、父さんが首を縦に振らなかったのだ。

介護に疲れた母親が鬱になってしまいます。

家族が壊れると感じた母親は、マーティン氏を24時間介護の施設に移そうと考えます。しかし、父親が反対します。

どちらの意見も正しいと思います。結果だけを見ると、マーティン氏が意識を回復したから結果的に良かったですが、もし意識が回復しなくて母親が潰れてしまっていたら、父親の判断が誤りという結果になっていました。

もし自分が親の立場だったら、どちらを選択しただろうと考えさせられました。

 

いじめ

でももっとひどいのは、その冷淡さが個人攻撃に変わるとき。ぼくは一部の介護士から「邪魔者」「バカ」「ゴミ」と呼ばれてきた。自分のほうが優れている、と思い込んでいるのだろうが、そんなふるまいによって、彼らは自分がどれほど愚かな人間かをさらしている。

これは実際の現場で起きていることだと思います。

2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件でも、そのような考えのもと殺害につながったと思っています。

介護士の方は、障害者だからといって、無下に扱うのはやめていただきたいと思います。もちろん、優しい人もいると思いますが、事件を受けてそのような人物もいることを知っているので、再考させられます。

 

日本理化学工業株式会社という会社では、86人中63人の方が知的障害者(25人が重度の障害)です(2020年2月現在)。

この会社の理念は、禅寺のお坊さんの言葉に基づいています。以下引用です。

「人間の究極の幸せは、1つは愛されること、2つ目はほめられること、3つ目は人の役に立つこと、4つ目は人に必要とされることの4つです。福祉施設で大事に面倒をみてもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにするのです」

このような素晴らしい考えもあります。

この書籍を読んで、色々と考えることがありました。

 

親からの死ねという言葉

ひとつだけ、絶対に忘れられないけんかがある。父さんが怒って出て行ったあと、母さんが床で泣いていた。両手をぎゅっと握り合わせて、うめくように泣いている母さんから、ひりひりするような悲しみがあふれ出していた。とても孤独で、ひどく取り乱し、絶望しているように見える。あぁ、僕が母さんを安心させてあげられたら。車椅子から立ち上がって、数々の苦しみを引き起こしてきた抜け殻のようなこの身体を置いて。

母さんがぼくを見上げる。目に涙をいっぱいためて。

「死になさいよ」。ぼくを見ながら、ゆっくりと言った。「死んでちょうだい」

母親の深い絶望を感じました。

愛した息子が障害者になり、さらに他の子供にも悪い影響を及ぼし続けている状態が長く続けば、このようなことになってしまうかと思います。

また、その罵声を浴びせられても何もできない、マーティン氏の無力感も感じました。

本当に、自分が生きていることに感謝しないとなと強く思った一文です。

 

感想

マーティン氏の回顧録です。

どのような扱いを受け、どのように無力感を感じ、それでも幸せに向かって生きていくという内容です。

後半に向けてどんどん幸せになっていくので、読んでる方としては気が楽でした。

序盤がハードすぎて泣いてしまうこともありましたが、自分が健常者として如何に幸せか、これからどう生きていかないといけないのか、非常にやる気をもらった書籍でもありました。

 

中には笑えるシーンもあります。

今でこそパソコンで多くのことができますが、マーティン氏が使い始めた当初は機能が少なく、母親とマーティン氏が単語表をつくることもありました。

そこで、母親が息子と一緒になる人がいるかもしれないということで、「勃起」や「オーガズム」といった単語を入力していきます。

子供としてはこれは拷問だなと笑ってしまいました。

 

介護者による性的虐待などもあり、とてもつらい人生だったと思います。

それでも前を向いて歩んでいくマーティン氏は本当に尊敬できる人物だと思います。

 

TEDトークでも、私が引用した母親の「死んでしまえ」という言葉が出てきます。

普通の人生を歩んでいる私たちのような人間は、そのような場面に出会すこともないかと思います。

 

私自身、小学校のとき軽いいじめで登校拒否になりましたが、そんな経験よりもっと大変な人生を歩んできたマーティン氏が頑張っているんだから、自分も頑張ろうと奮い立たされた本です。

やる気が出ない時や、人生でどうすれば悩んだ時に読めば、自分の人生を前向きに進められる書籍だと思いました。